第5章−7


シュウたちに見つからないように、あたしはアンナちゃんを連れて学校横の林に移動した。
「…何か用」
さっきまで学校にいたので、今のアンナちゃんは潜入用の子供の姿をしている。
見た目が全然違うから、どうも元バージョンのアンナちゃんと同じ人の気がしない。子供を相手にしているようで、面と向かうとちょっとペースが狂う。

「アンナちゃんさ」
小さな顔を見下ろしながら、あたしは優しく提案した。
「会社辞めたら?」
「はぁっ!?」
アンナちゃんが眉間にシワをよせて聞き返す。
この邪険な態度。中身は全くもっていつものアンナちゃんだ。

「えーとね、ちょっと待ってね、それについて渡す物が色々…」
とりあえず抱えていた紙袋を、先に渡した。
「とりあえずこれ。あげます、どうぞ」
必要になるかどうかは分からないけど、買い物してきた。丈夫なハサミとサラダオイル。

袋の中身を見たアンナちゃんが、アーモンド形の目をカッと見開く。
「アンタ…何て恐ろしいことを…」
アンナちゃんは羽先で口を覆いながらよろよろと後ずさった。
「このハサミで!シュウを刺せっていうんだね!?」
「ち、違うよ!!あんたの考えの方が恐ろしいわ!」

「いいからもらって。せっかく買ったんだし」
「要らないよ…重いし、邪魔だし。アンタ、自分のプレゼントのセンスについて一度考え直した方がいいと思うよ」
「別にこれがあたしのセンスってわけじゃないよ…えーとねー」
どうも説明しにくい。

気合を入れよう。
あたしは背筋を伸ばして右手を挙げた。
「ダークウィズカンパニーの社訓を教えてあげます!ダークウィズカンパニーは、子供のために!はい!」
「はい、って何さ。いいよ、社訓なんか…」
「ダークウィズカンパニーは、世界のために!ダークウィズカンパニーは、未来のために!それから!!」
アンナちゃんが首を振ってどこかへ歩いて行ってしまおうとしたので、あたしは慌ててアンナちゃんの羽の端を捕まえた。
「それから…ダークウィズカンパニーは、自分のために。自分のために行動してもいいと思うよ、アンナちゃん」

「自分の…?」
「あたしも自分のやりたいようにやることにしました。アンナちゃんがこの任務に乗り気じゃないなら、会社を辞めちゃえばいいと思う。今日は、そうお勧めしたくて来たのです」

アンナちゃんは驚いた顔であたしを見つめた後、静かに目を伏せた。
「…アタシはレジェンズだよ、。レジェンズにはね、自分のためにやりたいことなんかないんだよ」
その言葉の持つ意味に気付かずあたしは言った。
「いや、そんなこと言ってもバレバレだから。あるでしょ、やりたいこと。シュウと一緒にいたいんでしょ」
「…………」
アンナちゃんは返事をしなかった。
どうも反応が芳しくない。不安になって、確認してみる。
「え…シュウと一緒に…いたいんだよね?もしかしてこれ、あたしの先入観ですか…?」

気まずくなるくらい長い沈黙が続いた。
肯定も否定もしないまま、アンナちゃんがぽつんと言った。
は知ってる?シュウってさ、すごく変な子なんだよ」
「変な…?うん、まあ。変って言えば、ここで会う人はみんな変だけど…」

「あの子がいると風が吹くんだ」
言いながらシュウを思い出しているのか、アンナちゃんは笑って空を見上げる。
「あの子が笑うとアタシは嬉しい。だって、とってもいい風…」
目を閉じる。まるでその言葉に誘われるかのようにふわりと風が吹いてきて、アンナちゃんの青い襟巻きを揺らした。
隣のあたしも、風に吹かれる。
「ああ、そっか…」
シュウも風だけど、アンナちゃんも風のレジェンズなんだ。

「勘違いしないでほしいんだけど、アタシは任務をやりたくないわけじゃないんだよ」
あたしはちょっと驚く。
「え、そうなの」
「そうだよ。勘違いしないでよ。アタシのことだけの問題なら、シュウを騙したって全然構わない。やろうと思えば今からだってできるんだよ、本当だ」
アンナちゃんはあたしを見上げて一生懸命に言った。
「だけど、仲良くしてた子に裏切られるなんて話はさ、シュウには似合わなすぎるだろ?似合わないよ、シュウには。…ダメなんだ。あの子はすごく変な子だから、あの子がそういう目に遭うなんて、アタシは想像できないよ」
「…………」
なるほど。シュウを騙すのが嫌なのではなく、シュウが騙されるのが嫌なのか。…それとこれとがどう違うのか、あたしにはさっぱり分かりません。
さっぱり分からないままに、想いの深さを覗き見た気がして胸が痛んだ。
「……、それはやっぱり、アンナちゃんがシュウを騙したくないってことだと思うよ」
そう言えば、シュウが絶望する時は世界の終わりじゃないかって気が、あたしもする。

「そうかな。これが…アタシのやりたいことなのかな」
アンナちゃんは腕を丸めてじっと自分の羽先を見ている。
「こんな気分、初めてだよ。シュウのせいかな。自分に望みがあるなんて、変な感じだ…」
「アンナちゃん…」
見た目のせいで、本当に小さな子供みたい。
当たり前のことに生まれて初めて気が付いて、途方にくれている子供。
悲しませたくないと思う。

「BB部長はああ言ったけど、うちの会社、生レジェンズはあんまり束縛しない主義みたいなんですよ。気が向かなくてどっかに行っちゃった人は、前にもいたんです」
アンナちゃんがびっくりしたように顔を上げた。
「そうなの…?」
「うん」
「でも。あの女はアタシのこと、一生石に閉じ込めるって」
「部長はその…色々大袈裟なんですよ。あれで意外と悪気はないんです」

「カニさんのとき、ほんとに全然怒られなかったから。後からこっちで色々書類を作って、カニさんは普通に退職したことになりました。だからアンナちゃんもそうすればいいと思うんです。あたし、用紙を持ってきました」
あたしは用意してきた書類をカバンから取り出した。
「退職届を書く用紙と、封筒と、こっちはソウルドールの紛失関係で出さなきゃいけない届出です。カニさんのときのコピーをお手本に持ってきたから、真似して書いて会社に提出してください。ソウルドールの名前のとこはハーピーに変えてね」
「だけど…」
状況を受け入れ切れないらしい、アンナちゃんは不安そうにせわしなくまばたきして聞いた。
「これを提出したら、アタシは会社を辞められるの?今の任務を続けなくてもいいの?」
「うん。部長に言うと無駄に揉めると思うから、これを出す時は総務部の総務さんって女の人のところに行くといいと思います。総務さんから人事に回してもらえば大丈夫です」

アンナちゃんは渡された紙とあたしとを何度も見比べる。
…でも…ほんとにいいの?こんなことしてが困らない…?」
「全然!困らないようにちゃんと考えてますから。…まあ、あたしがこれ話したっていうのは黙っててね」
アンナちゃんを安心させようと、あたしはにこにこと笑い返す。
そうしながらちょっと自分に感動していた。
何て無難で角が立たない解決策なんだろう。今日のあたしはかなり素晴らしいよ。

カニさんのケースは戦闘後の退職だったけど。よくよく考えたら、戦った挙句失敗して辞めるか戦う前に辞めるかなんて、現場レベルの些細な違いでしかないと思うんだよね。
アンナちゃんが戦う前に辞めたって、誰も損しない。
任務の失敗回数が一回増えるだけだ。よくあることだ。

アンナちゃんはこれで幸せ。アンナちゃんに無理強いしなくて済んで、あたしも幸せ。部長たちを裏切る行為とはいえ、この程度ならあたしの良心は別に痛まない。
あとは総務さんが何とかしてくれる。あの人なら多分絶対何とかしてくれる。
あたしが入れ知恵したことさえばれなければ、これでみんなが円満に幸せになれるだろう。

「大丈夫です。退職するのは前にも一回あった、全然どうってことない話です」
にこにこしながら強調すると、アンナちゃんもようやく笑顔になった。
…じゃあ、アタシは――」



「あーっ!!あなた!!」
聞き覚えのある声が響き渡ったのは、その時だった。

あたしたちを見つけて、すごい勢いでこっちに歩いてくる女の子がいる。
ピンクのふわふわツインテールの、ぱっちり大きな青い目の。



「うわ、まずっ…!」
「そこっ!隠れても無駄よっ!」
何をごまかす暇もなく、メグが目を三角にしてあたしを指さした。
「どうーも怪しいと思ったら…そっちの黒服、ダークウィズカンパニーの子でしょ!ってことは!」
びしっと今度はアンナちゃんに指を向ける。
「アンタも!あの縦ロールおばさんの一味なのね?転校生のふりをしてシュウに近づいたのは、タリスポッドを奪うのが目的だったって訳ね!?」

理解早すぎです。

「そうなんでしょ!そういうことなんでしょ!ねえ、どうなのよ?」
メグがとんがった声で詰め寄ってくる。
「……!」
アンナちゃんは唇を噛んで下を向いてしまった。あたしが慌てて間に入る。
「ご、誤解ですメグちゃん。一体何の話ですか?あたしはたまたまここを通りがかっただけで、この子にはたまたま今、道を聞こうとして…」
「じゃ、何渡してたのよ、今」
「それはえーと、えーと、…ってうわー、アンナちゃーん!!」
あたしはしどろもどろになりながら状況の言い訳を試みる。その目の前で、アンナちゃんがしゅるっと音を立てて元の頭身に戻った。
やっぱり無理なんだよ。ぽつりと、悲しそうな呟きが聞こえた。

「フ…フフフ。ばれちゃ〜しょうがないねえ」
大人の背の高さになったアンナちゃんが、メグを見下ろす。すっかり悪の女スパイの口調になっている。

嫌な予感がした。
アンナちゃんは。笑ってその場をごまかすとか、適当に穏便に済ませるとかは、できない人だ。
いつでも強がる。そして偉そう。
「待って、アンナちゃ…」
「そうだよ、アンタの言う通りさ。アタシはDWCのレジェンズだよ。シュウに近づいたのは、もちろんあの子のタリスポッドが目当てだったのさ。今まで気が付かなかったなんて、ちょっと鈍すぎるんじゃな〜い?」
と、アンナちゃんは一息に言った。
メグが拳を握ってアンナちゃんを睨み返した。
「…やっぱりね」

女と女の厳しい視線が交錯する。
二人の横で、あたしは、頭を抱えた。
何でこの人はいつもこう、やけくそになって人を逆撫でする方へ逆撫でする方へ進むかな。
フォローのしようがありません。

そこをばらしてしまったら、アンナちゃんはもう、今まで通りシュウと過ごすことができなくなる。円満に終われるはずだった計画が台無しだ。
「えーとえーと、待ってメグちゃん、聞いて。事情があるんです。確かに最初はそうだったんだけど、今は…」
アンナちゃんの自己紹介は確かに本当だけど、間違ってるのだ。
メグには誤解されたくない。本当はアンナちゃんはタリスポッドを奪う気なんかなくて、そのことで部長に怒られてたくらいで、あたしの素晴らしい思いつきのおかげで明日にもDWCを辞めようとしてたとこで。
アンナちゃんは、シュウと仲良くなるレジェンズで。
アンナちゃんは――
きっとシュウのことが――
「いいよ、
アンナちゃんの広げた翼があたしの鼻先を遮った。

「これですっきりした。どうやったってアタシがシュウにしたことが消えるわけじゃなし――アタシには、やっぱりこういうのがお似合いだよ」
視線はあたしを見ていない。あくまでも強気な表情でメグを見下ろし、アンナちゃんは言った。
「――決着をつけるとしようか。明日の3時、ブルックリンブリッジ近くの公園で待つ。そう、シュウに伝えな」
「いいわよ、明日の3時ね!あんたなんかシロンにかかればぶわーよ、ぶわー!!」

「ちょ…ちょっと待ってってば…」
会話があたしを置き去りにしてえらい方向に進んでいる。
色仕掛けですらなくなってるし。
決闘の申し込みみたいだし。
「か、勝手にすっきりされてもあたしが困るよ!何言っちゃってくれてんの!?どうしてそんなに素直じゃないの!?」
「いいんだ、目が覚めた。…所詮は籠の鳥さ」
アンナちゃんはそこでちょっとあたしを振り返って、ひどく寂しそうに笑った。
「アンタの変な思いつき、悪くなかった。聞いてて楽しかったよ。ありがとね」


話はそれで終わってしまった。
自分の中だけで結論を出してしまったアンナちゃんは、めちゃくちゃ頑固で、あたしの話を振り切るように地面を蹴ると、ばさばさ羽ばたいてどこかへ飛んでいってしまう。
渡したものは結局受け取ってもらえなかった。
途方にくれたあたしと、まだ目を三角にしてるメグだけがその場に残される。
「そんなあ…アンナちゃーん…」
あたしはへなへなと地面に座り込んだ。

この世界でぶれずにやってくためのいい感じの何かを、今日見つけたと思った。自分のために。いい決心ができたからにはいい方向に変わっていけると思った。
調子に乗りすぎていたのかもしれない。
せっかくいい思い付きだと思ったのに、どうしてこうなっちゃうんだろう。

…むしろ、あたしのせいかな。
あたしがここにいなければ、アンナちゃんの正体がメグにばれることはなかった。
あたしが事態を悪化させてしまった。
いい思いつきどころか、こんなことなら最初から何もしない方が良かったよ。

メグがたじろいだように後ずさった。
「嫌だ、ちょっと…泣いてるの?」
「別に…泣いてるわけでは…」
指摘されたら余計にめそめそした気分になってきた。
「ほんと、意味わかんないわ…。あなた、あたしより年上よね。仕事をしてる大人なのよね。なのにいつ会っても、ほんっとグダグダよね」
「はい…」
メグは困った物を見るようにあたしを見て、しばらく黙る。
肩をすくめた。
「…ま、いいわ。とにかくあたし、あの女に騙されてたことをシュウに教えてくるわ。そういう伝言だしね?」

あたしははっとなって顔を上げた。

「シュウもシュウよね、全くもう…見え透いた手に引っかかってデレデレデレデレしちゃってさ、これで少しは懲りてもらわないと…」
メグはぶつぶつ言いながら踵を返し、あたしに背中を向けて去っていく。

――あの子がいると、風が吹くんだ。
そう、アンナちゃんはあたしに言った。あんなに偉そうだった人が、優しい顔で笑ってた。
――こんな気分、初めてだよ。
――あの子が笑うとアタシは嬉しい。だって、とってもいい風…

あたしはメグを追いかけ、腕を掴んだ。
「待って!」

「ちょっと…何?放してよ」
「メグちゃんは誤解してるんです。っていうかそれはもちろん根本的にアンナちゃんのせいで、アンナちゃんが悪いんですけど!でも、アンナちゃんのことをシュウにそういう風に言うのは止めて」
あたしは何をこんなに必死になっているんだろう。一体何のために。
色んなことが上手く行かなすぎて無性に悲しかった。
「いや、意味わかんないから。それにそもそもあなた、あたしにお願いできる立場じゃないでしょ?」
「そこを何とか…!そこを何とか…!」
メグがあたしの手を振りほどこうとする。揉み合いになった。

「ちょっと…怒るわよ、本気で!」
「あたしも本気です!あたしがこれでも悪の組織の一員だってこと、忘れてもらっちゃ困ります!」
逃がすわけには行かない。自由になっている方の腕も捕まえて、押さえ込む。振りほどかれないように自分の両手を深く差し入れる。
メグを羽交い絞めする体勢になった。
テンパりすぎて自分が何をやってるか分からなくなってきた。
「えーとえーとそうだよ、考えてみたらこういう場合、目撃者を口封じするのは基本だよね…?」
「ちょっと!考えてること口に出てるわよ!物騒じゃないの!」
囚われの身になったメグが、足をじたばたさせて暴れる。

――そこに穏やかな声がかけられた。
「メグを放して欲しいんだな?」

「………!」
メグを羽交い絞めにしたまま、あたしは声のした方に顔を向けた。
少し離れた場所に、いつの間にかもう一人子供がやってきていて、困ったようにこっちを見ていた。
メグが叫んだ。
「マック!」
「マックさん、…」

マックさんが薄茶色の目でじっとあたしを見つめている。
敵意を向けてくるでもない静かな様子はいかにもマックさんらしく、それで、急に頭が冷えた。
何をやってるんだ、あたしは。
どうやらメグだけでなくマックにも目撃されてしまったらしい。
というか、あたしがメグちゃんを人質に取っていて、そこにマックがやってきたみたいなこの状況は何なんだ。もう言い訳を考えることもできなくて、あたしはメグを抱える腕に力を込めた。
「そ…それ以上近づかないで!えーとえーと人質が、えーと」
マックが静かに口を開く。
「放さなければ…」
「放さなければ?」
「警察を、呼ぶんだな」

「…………」
巨大な何かに打ちのめされて、あたしはすごすごと腕を緩めてメグちゃんを解放した。
「……、あぅ!」
解放され際にメグがメグチョップを放ってそれがまともに下方向から顎を直撃し、あたしはその場にうずくまる。脳天がいい感じに揺さぶられてくらくらした。
マックさんが困ったような顔で微笑んだ。
「…メグもなんだな。怒るのは、やめるんだな」
「だってマック聞いた!?あの転校生、やっぱりシュウのタリスポッドを狙ってたのよ!あたしは最初から怪しいと思ってたわ、早くシュウにも教えなきゃ――」
「メグ」
マックさんが首を振る。
「メグ、落ち着くんだな。それは嘘なんだな」

メグは数秒ぽかんとした後、
「嘘!?嘘なんかついてないわ、ほんとに聞いたのよ!?」
両手を広げてマックに食ってかかった。
あたしも聞きながら呆気に取られている。あたしも、メグちゃんは嘘はついてないと思います。
「でも、自分に嘘なんだな、メグ」
と、マックは言った。
「あの子のことをメグが気にするのは、あの子がシュウのタリスポッドを狙ってるからじゃ、ないんだな。後から怒る理由を見つけてみたって、それはほんとは、嘘なんだな?」

「そんなこと…」
穏やかにきっぱりと否定されて、メグの声から力が抜けていく。
「そんなこと、ないもん…何で?何でそんな風に言うの…」
マックさんはただ困ったように笑っているだけだ。
「僕にはよく分からないんだな。あの子のことは、メグの方がきっとずっと、よく分かってるんだな?」
「…………、……」
メグが下を向いた。

「うん。僕には、よく分からないことなんだな。でも、きっとあの子は――」
マックさんはアンナちゃんの去っていった方角を見やって微笑んだ。
思い出したようにまた、穏やかな風が吹く。

「シュウのことが、とっても好きなんだな?」


ああ。その通りだ。
あたしにもよく分からないことなんだけど、でもきっと、そういうことなんだと思う。
「だ…誰か、マックさんにハンバーガーをお持ちして…――」

しみじみしながら呻いたところで、ぽけっと頭を蹴られた。
「…ンガガ」
マックさんと一緒についてきていたのか、いつの間にかねずっちょがそこにいて、バカにしたような顔であたしを見ていた。


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