第13章−3


「――…と、いうようなことがあった訳ですよ、ランシーンさん」
あたしは言った。

ばさっ。
ばさっ。
巨大な換気扇がゆっくりと回転している。
岩の洞窟。丸い窓辺にうずくまる影は動かない。

「その後ラッパーキングさんが全然ソウルドールに戻ってくれなかったから、ほんとに時間がかかりまして。究極のレジェンズ、究極に遅かった。出現も章またぎ」
「…………。……」
「何が言いたいかって言うと、つまり。ランシーンさんが今手にしている扇風機の買出しには、あたしとしても大変な苦労を――」

ばさっ。
ばさっ。
扇風機を持った手をゆっくりと上下させ、ランシーンさんは半目になった。
「……割と、どうでもいい……」




ばさっ。
ばさっ。
規則正しく空気を切り裂く音がする。
逆光を浴びた影が呟く。
「――…。ほう…風が、変わってきたねえ…」

ばさっ。
回り続けるファンの羽根がふと速度を落とす。かしいで止まった。
ゆっくりと、逆方向に回りだす。

ランシーンさんがわずかに首を傾ける。
目を閉じる。その変わる風向き、自分の横を通り過ぎた空気の動きから、何かの言葉を聞き取ったかのように。

「土…、ですか…」


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