「続・毎日欝なんです」の前半、ユルは何を調べていたのかについて





「レジェンズの属性は、『風』、『土』、『火』、『水』。そして『闇』か。…そもそもの最初から、何だかバランスの悪い話だなあと思っていたんだよ」
ランシーンの隣で、ユルは指折り数えていた。
「火には、水だろ。風には、土だ。なら、闇に対して配置されるだろう『光』という属性はないのかい?」

「…………」
DWCの影の最高権力者にしてユル・ヘップバーンの10年来の仕事の相棒は、その他愛のない問いかけに乗ってみせるのは彼にとっては心底面倒くさいことなのだ、と言いたげにユルを見やった。
「『光』などという属性は」
まばたきもせずにユルの言葉を否定する。
「存在しません。そんな話は聞いたこともありません」

「『存在しない』――か」
ランシーンにとっては恐らく言葉以上の意味は持たないだろう答えを、ユルはゆっくりと繰り返す。
「人間から見たバランスなんて私たちの知ったことではありませんよ」
ランシーンがつまらなそうに鼻を鳴らした。
「存在しません。…あなたをがっかりさせましたかね」
しばらく押し黙ってから、ユルは首を振った。
「…そんなことはないよ、ランシーン。お前の話は私にとっていつでも示唆に富んでいる」

なぜならその答えでユルは確信することができる。
世界の全てを知っている竜が知らぬもの、語り継がれる伝説たちが語らないもの――「光」の存在、すなわち不在を。


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