第1章−1


悲しい終わりの夢を見たのだ。

そこは、あたしの知らない世界だった。
空には暗い色の雲が重く垂れ込め、見渡す限り続く荒れ果てた大地は奇妙な姿の生き物たちで埋め尽くされている。
馬に似たもの、鳥に似たもの、虫に似たもの。異様な空気が漂うのは、その全員が同じ目をしているせいだろうか。細く引き絞られた瞳孔、ぎらぎらとした光を放つ金の虹彩。
異形のものたちの雄叫びと吹きすさぶ風の音が轟々と交じり合って、耳が割れそうだ。

鉛色の空の向こうを純白のドラゴンが飛んでいる。
六枚の羽を持ち、神秘的な光で全身を淡く輝かせた全智なる竜。
戦いの始まりを告げる風。
厳しいまなざしの先にある空はひときわ暗く、目を凝らしてみたあたしは、それが空ではなく、雲を突くほど巨大な闇の輪郭の一部分であることに気が付いた。

呆然と暗い空を見上げたまま、あたしは呟く。
「――『ジャバウォック』…」

なぜだろう。目の前に広がるこの陰惨な光景を、あたしは確かに知っている。
彼方に広がるあの闇がとても恐ろしいものであることも、始まってはいけない戦いがこれから始まってしまうことも。




思い出した。
これ、何年か前にテレビで見たんだ。

何て言ったっけ、あれ。ちょうどこんな風に、伝説上の生き物たちが復活して戦い合う話だった。



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